自筆証書遺言とは?メリット・デメリットから法務局の保管制度まで行政書士が詳しく解説

「自分が亡くなった後、家族が相続で揉めないようにしておきたい」

「自分の財産を、誰にどのように残すのかを自分の意思で決めておきたい」

このように考えたときに、重要な役割を果たすのが「遺言書」です。

遺言書にはいくつかの種類がありますが、その中でも比較的身近で、費用をかけずに自分で作成できるのが「自筆証書遺言」です。

自筆証書遺言は、原則としてご自身で作成できる手軽さがある一方、書き方や内容に不備があると、せっかく作成した遺言書が無効になったり、相続手続きで問題が生じたりする可能性があります。

今回は、自筆証書遺言のメリット・デメリット、作成する際の注意点、そして現在利用できる「自筆証書遺言書保管制度」について、行政書士の視点から、分かりやすく解説します。

1.自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言とは、その名前のとおり、遺言をする本人(遺言者)が自分で作成する遺言書です。

公証人に作成してもらう「公正証書遺言」と異なり、原則としてご自身で遺言書を作成することになります。

自筆証書遺言の大きな特徴は、

・自分一人で作成できる

・公証役場に行かなくても作成できる

・比較的費用をかけずに作成できる

・思い立ったときに作成できる

という手軽さにあります。

一方で、法律で定められた方式に従って作成する必要があるため、「紙に自分の希望を書けば、それだけで遺言書として有効になる」というわけではありません。

特に、遺言書の本文については、原則として遺言者本人が自書する必要があります。

また、遺言書に記載する財産の内容や相続人の指定などについても、できるだけ具体的かつ明確に記載することが重要です。

2.自筆証書遺言のメリット

自分で手軽に作成できる

自筆証書遺言の最大のメリットは、比較的手軽に作成できることです。

公正証書遺言のように、公証人との打ち合わせや公証役場での手続きが必ず必要になるわけではありません。

「まずは遺言書を作っておきたい」と考えたときに、自分のタイミングで準備を始めることができます。

費用を抑えて作成できる

自筆証書遺言は、ご自身で作成するのであれば、公正証書遺言のように公証人の手数料が必要になることはありません。

そのため、できるだけ費用を抑えて遺言書を準備したい方にとって、一つの選択肢となります。

ただし、専門家に遺言書の内容について相談したり、作成のサポートを依頼したりする場合には、別途専門家への報酬が発生することがあります。

遺言の内容を他人に知られにくい

自筆証書遺言は、基本的には自分で作成するため、遺言の内容を他人に知られずに準備することができます。

「誰に何を相続させるのかを、家族にもまだ知られたくない」という場合にも利用しやすい方法です。

ただし、自宅などに保管している場合、亡くなった後に遺言書が見つからない、紛失する、あるいは相続人によって隠されたり破棄されたりする可能性がある点には注意が必要です。

内容を変更・書き直ししやすい

遺言書を作成した後に、財産の状況や家族関係などが変わることもあります。

そのような場合、自筆証書遺言であれば、内容を見直して新しい遺言書を作成することが比較的容易です。

ただし、古い遺言書と新しい遺言書の内容が矛盾する場合などには、後々のトラブルを防ぐためにも、どの遺言が最新のものなのかが明確になるよう注意する必要があります。

3.自筆証書遺言のデメリット

書き方を間違えると無効になる可能性がある

自筆証書遺言は、法律で定められた方式に従って作成しなければなりません。

たとえば、遺言書の本文の書き方や日付、署名、押印などに不備があると、遺言書自体が無効になる可能性があります。

「自分の財産をこの人に渡したい」という気持ちがあっても、法律上有効な遺言書として成立していなければ、その意思を実現できないことがあります。

財産の記載方法が不明確だとトラブルになる可能性がある

遺言書では、「長男に自宅を相続させる」「妻に預貯金を相続させる」など、誰に何を残したいのかを明確にしておくことが重要です。

特に不動産については、単に「自宅を長男に相続させる」と書くよりも、登記事項証明書などを確認し、対象となる不動産を特定できるように記載することが望ましいでしょう。

預貯金についても、金融機関名や支店名などを明確にしておくことで、相続人が遺言の内容を確認しやすくなります。

自宅で保管すると紛失や発見されない可能性がある

自筆証書遺言を自宅で保管していた場合、遺言者が亡くなった後に、相続人が遺言書の存在に気付かない可能性があります。

また、保管場所を知っている人が限られていると、遺言書が発見されないまま相続手続きが進んでしまうことも考えられます。

さらに、遺言書を保管している人と相続人との関係によっては、遺言書の隠匿や改ざんなどを疑われるような事態につながる可能性もあります。

原則として家庭裁判所の「検認」が必要になる

自宅などで保管されていた自筆証書遺言については、原則として、相続開始後に家庭裁判所で「検認」の手続きを行う必要があります。

検認とは、遺言書の内容を確認し、その状態を明確にするための家庭裁判所での手続きです。

ただし、「自筆証書遺言書保管制度」を利用して法務局に保管されている遺言書については、相続開始後の検認が不要となります。

4.自筆証書遺言を作成するときの基本的な流れ

STEP1 財産を整理する

まず、自分がどのような財産を所有しているのかを整理します。

たとえば、預貯金、不動産、株式などの有価証券、自動車、生命保険、その他の財産などです。

同時に、借入金などのマイナスの財産についても確認しておくことが大切です。

STEP2 誰に何を残すのかを考える

次に、自分の財産を誰にどのように残したいのかを考えます。

法定相続人が誰なのかを確認したうえで、「妻に自宅を相続させたい」「長男に預貯金を相続させたい」「お世話になった人に財産を遺贈したい」など、自分の希望を整理します。

STEP3 遺言書を作成する

財産と相続人等の整理ができたら、法律上の方式に従って遺言書を作成します。

ここでは、誤字や記載漏れがないか、財産を特定できる内容になっているかなどを十分に確認することが重要です。

特に、不動産や預貯金などの財産が複数ある場合は、遺言書の内容と実際の財産との間に食い違いがないよう注意しましょう。

STEP4 遺言書を保管する

作成した遺言書は、安全な場所に保管します。

自宅で保管する方法もありますが、紛失や発見されないリスクを考えると、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用する方法も検討できます。

5.自筆証書遺言は法務局で保管できるようになりました

自筆証書遺言について、現在では法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することができます。

この制度は、作成した自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で保管してもらう制度です。

従来の自筆証書遺言では、「作成した遺言書をどこに保管するか」という問題がありました。

自宅に保管していると、「遺言書が見つからない」「紛失してしまった」「相続人が遺言書の存在を知らない」といった問題が起こる可能性があります。

法務局の保管制度を利用することで、遺言書の原本が法務局で保管されるため、紛失や相続人等による破棄・隠匿・改ざんなどのリスクを防ぐことができます。

また、法務局で保管された自筆証書遺言については、相続開始後の家庭裁判所による検認が不要となります。

これは、自筆証書遺言のデメリットを補う大きなメリットといえるでしょう。

6.法務局の保管制度を利用する場合の手続き

自筆証書遺言を作成する

まず、法律上の方式に従って自筆証書遺言を作成します。

なお、法務局の保管制度では、遺言書の内容について相談したり、「この内容なら相続人がきちんと財産を取得できるか」といった法律相談を受けたりすることはできません。

そのため、遺言の内容そのものについて不安がある場合には、事前に行政書士などの専門家へ相談することも一つの方法です。

保管申請をする法務局を確認する

保管申請は、どこの法務局でも自由にできるわけではありません。

原則として、遺言者の住所地、本籍地、または所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所など、法律で定められた遺言書保管所で申請することになります。

法務局へ保管申請を行う

必要書類等を準備し、法務局の遺言書保管所へ申請します。

申請は遺言者本人が行う必要があります。

法務局では、遺言書が民法で定められた自筆証書遺言の形式に適合しているかについて、外形的なチェックを受けることができます。

ただし、これは「遺言の内容が法的に有効であること」や「相続手続きが問題なく進められること」を保証するものではありません。

法務局で保管される

申請が完了すると、遺言書は法務局で保管されます。

現在の制度では、遺言書の保管申請手数料は、遺言書1通につき3,900円です。

自宅で保管する場合と比較すると費用はかかりますが、遺言書の紛失や隠匿、改ざんなどを防ぐことができ、相続開始後の検認も不要となるため、安心して保管したい方にとって有力な選択肢となります。

7.法務局の保管制度を利用すれば「絶対に安心」なの?

ここは非常に重要なポイントです。

法務局に遺言書を預ければ、すべての問題が解決するというわけではありません。

法務局では、遺言書の形式について外形的なチェックは行われますが、遺言の内容そのものについて相談することはできません。

つまり、「この財産の分け方で問題ないか」「相続人の遺留分について問題はないか」「この書き方で不動産の相続手続きがスムーズにできるか」「家族関係が複雑だが、この内容で大丈夫か」といった個別具体的な相談については、別途専門家に確認する必要があります。

遺言書は「作れば安心」ではなく、「自分の意思が、法律上有効な形で、相続人に正しく伝わり、実際の相続手続きに活用できること」が重要です。

8.自筆証書遺言はどんな方に向いている?

自筆証書遺言は、特に次のような方に向いていると考えられます。

・できるだけ費用を抑えて遺言書を作成したい方

・自分のタイミングで遺言書を作成したい方

・遺言の内容を他人に知られずに準備したい方

・まずは自分で遺言書を作ってみたい方

・法務局の保管制度を利用して安全に保管したい方

一方で、相続人が多い場合や、家族関係が複雑な場合、不動産や事業用資産など財産の内容が複雑な場合には、専門家に相談しながら遺言書を作成することも検討した方がよいでしょう。

9.まとめ 大切なのは「遺言書を作ること」だけではありません

自筆証書遺言は、比較的手軽に作成でき、費用も抑えられるというメリットがあります。

その一方で、法律上の方式や財産の記載方法などを間違えると、遺言者の意思が十分に実現できない可能性があります。

また、せっかく作成した遺言書も、相続開始後に発見されなければ、その存在を知らない相続人が法定相続分に従って手続きを進めてしまう可能性もあります。

そのような自筆証書遺言の弱点を補う制度として、現在は法務局による「自筆証書遺言書保管制度」があります。

「自分で遺言書を作りたいけれど、保管場所が心配」

「相続人にきちんと遺言書を見つけてもらえるか不安」

「自筆証書遺言を作りたいが、書き方や内容に不安がある」

このような場合には、法務局の保管制度を利用することや、行政書士などの専門家に相談することも選択肢の一つです。

遺言書は、残されたご家族への最後のメッセージであると同時に、相続手続きを円滑に進めるための大切な準備でもあります。

「まだ元気だから遺言書は必要ない」と考えるのではなく、元気で判断能力が十分にあるうちに、将来のことを一度考えてみることが大切です。

こやま行政書士事務所では、遺言書の作成に関するご相談を承っております。

「自分の場合は遺言書を作った方がよいのか」

「自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらが自分に合っているのか」

「財産や家族関係を整理して、遺言書作成の準備をしたい」

など、遺言・相続に関するご相談がございましたら、お気軽にご相談ください。

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